肝細胞がん<治療編>
さて、幹細胞がん薬物療法編です。
治療
- 肝細胞がんは、B・C型肝炎ウイルスの持続感染が原因となっているため、定期的なスクリーニングが早期診断に繋がり予後んに影響する。
- 治療は、「肝予備能」「肝外転移」「脈管侵襲」「腫瘍数」「腫瘍径」の5因子をもとに設定されている、
- 肝予備能はChild-Pugh分類にて行い、肝切除を考慮する場合はICG検査を含んだ肝障害度を用いる。また、肝外転移、脈管侵襲、腫瘍数、腫瘍径は治療前の画像診断に基づいて判断される。
- 薬物療法は基本的に分子標的薬に限られる(Child-PughAの場合のみ)。そのほかに肝動脈側瀬化学塞栓療法(TACE)や肝動注化学療法がある。
根治目指した治療
肝切除
- Chilid-Pugh分類等で肝機能良好で遠隔転移や脈管侵襲を伴ってない肝細胞がんでは、手術が選択される。
- 上記図のように腫瘍数3個以下の場合に選択され、肝切除量は最低限にしながら根治を高める工夫として、術中超音波検査を使用した系統的肝亜区域切除が標準術式とされている。
ラジオ波焼灼療法(RFA)
- 超音波ガイド下で、腫瘍部分に電極を挿入し、450kHz前後の高周波で電極周囲に熱を発生させ、腫瘍組織を壊死させる方法。肝切除同様、腫瘍数3個いかのばあい適応となる。
- 3cm3個以下の肝細胞がん肝切除とRFAのRCTの結果が待たれている。
肝動脈化学塞栓療法(TACE;transcatheter arterial chemoembolization)
- 栄養動脈の遮断で血液の流れを止める効果と抗がん剤が長期的に滞留する効果を意図した治療法。
- 肝機能が良好で(Child-Pugh A,B)、肝外転移、脈管侵襲がなく腫瘍数が4個以上の場合に選択される。
- 薬剤を含み徐放する薬剤溶出性ビーズ(drug-eluting beads:DEB)を用いたDEB-TACEも使用される。
- 合併症として、腫瘍壊死・虚血による塞栓後症候群として、発熱や疼痛、炎症反応がみられる。対症療法で対応していく。
長期生存を期待した治療
肝動脈注化学療法
- 腫瘍門脈侵襲症例や肝内多発症例など肝内で進展している症例に実施される。
- ソラフェニブ(ネクサバール)と比較して(後ろ向きコホート研究)、5-FUとシスプラチン併用の肝動注化学療法は有意差がなかったことから、ソラフェニブが使用できないChild-Pugh Bに対する治療法としての可能性が報告されている。
- ①粉末化製剤のシスプラチン ②IFN併用 5-FU動注療法
③低用量CDDP 併用5-FU動注療法
分子標的治療薬
<レンバチニブ;レンビマ>
- 血管内皮増殖因子受容体1~3(VEGFR1~3)、線維芽細胞増殖因子受容体1~4(FGFR1~4)、血小板由来因子受容体α(PDGFRα)、幹細胞因子受容体(KIT)などの受容体チロシンキナーゼを阻害するマルチキナーゼ阻害薬である。
- REFLECT試験により、ソラフェニブと非劣勢が証明された。2018年に肝細胞がんに対する適応が追加された。
- PSおよび肝予備能が良好で、かつChilid-Pugh分類がAの切除不能進行肝細胞がんに対する一次治療として、ソラフェニブと共に強く推奨される。
<ソラフェニブ;ネクサバール>
- RAF阻害薬として開発された。RAF以外にも、血管新生に関わる血管内皮増殖因子受容体2(VEGFR2)、血小板由来増殖因子受容体β(PDGFRβ)、腫瘍形成に関わるFlt3(fms-like tyrosine kinase-3)、c-kitなどの受容体チロシンキナーゼを阻害するマルチキナーゼ阻害薬である。。
- SHARP試験:切除不能肝細胞がん Child-Pugh分類A
全生存期間(OS) プラセボ VS ソラフェニブ 7.9カ月 VS 10.7カ月
<レゴラフェニブ;スチバーガ>
- 血管新生に関わる血管内皮増殖因子受容体1~3(VEGFR1~3)、間質組織に発現する線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)、血小板由来増殖因子β(PDGFR-β)、腫瘍形成に関わる幹細胞因子受容体(KIT)、RET(rearranged during transfection)などの受容体チロシンキナーゼおよびRAS/RAF/MEK/ERK経路活性化に重要なRAF蛋白キナーゼ(BRAF,RAF1)を阻害するマルチキナーゼ阻害薬である。
- 高脂肪食でレゴラフェニブの活性代謝物(M-2,M-5)の血漿中濃度が低下し、AUC・Cmaxともに低下することが分かっているので、食後でかつ高脂肪食は避けるように指導する。
- がん化学療法後に増悪した切除不能な肝細胞がんに使用する。RESORCE試験では、ソラフェニブ不応性の進行肝細胞がんにおいて、プラセボと比較して、全生存期間(OS)において、7.8カ月VS10.6カ月と有意に延長している。
副作用やその対策については、レジメン編としてまとめます。