間質性肺炎
概容
- 間質性肺炎は、どの抗がん剤でも起こりうる可能性がある。
- 発見・対応が遅れるほど予後は悪化する。
→初期症状を見逃さず、適切な対応を速やかに開始する。 - 以下の5つに大きく分類される。
①慢性間質性肺炎 ひと(CIP)・非特異性間質性肺炎(NSIP)
②好酸球性肺炎
③閉塞性細気管支炎器質化肺炎
④びまん性肺胞障害 ※びまん性・・・一面に広がる
⑤過敏性肺炎 - 上記分類によりステロイドへの反応性が異なったり、予後が違うことに注意が必要である。
機序
- 抗がん剤による間質性肺炎は、①直接的な障害 ②投与後のアレルギーや炎症による間接的蔡瑁傷害 に分類される。
- 上記5つのように多様な分類が存在し、機序が完全に明らかになっているわけではない。
直接的障害
- 「投与量」に依存して起こることが多い。例えば、ブレオマイシンにおける肺線維症は、「総投与量」150mg以下で6.5%、151-300mmgで10.2%、300mg以上で18.8%になるなど直線的に増加している。ただし、明確な関係性の結論は出ていない。日本では300mgを超えないように規定されている。
- ブレオマイシンの障害機序は、フリーラジカルやTNF-α(tumor necrosis factor α)、インターフェロン 6等の炎症性サイトカインによるものとされている。
間接的障害
- 投与量には依存せずに発症する。
症状
- 疾患固有の症状はない。一般的に乾性咳嗽、呼吸困難といった呼吸器症状に加えて、皮疹や発熱を認めることがある。
- WBCや好酸球数の上昇がみられる。
- 生化学検査では、KL-6(シアル化糖鎖抗原KL-6)、SP-D(サーファクタントプロテインD)、SP-A、LDH等が比較的特異的に上昇するマーカーである。
- 特にKL-6やSP-Dは間質性肺炎の診断および治療効果判定に臨床で広く利用されている。
原因薬剤・危険因子・予後因子
- 1つの薬剤から多彩なパターンの間質性肺炎が発生することが分かっており、薬剤固有ではない。
- 患者からの聞き取りの際に、どのパターンかを考えるより、間質性肺炎が疑われる症状の聞き取りを行うことが重要。
- 細胞傷害性薬剤ではブレオマイシン、メトトレキサート、シクロホスファミド、ブスルファン、ビンブラスチン、エトポシドなどが報告が多く、分子標的薬ではゲフィチニブが有名である。
- 海外に比べ、ブレオマイシン(10.2%vs0.01%)やゲフィチニブ(5.27%vs0.45%)等の薬剤性肺障害の発症率が高いことが報告されている。
対応
- 最も適切な対応は原因薬剤の中止である。中止後も増悪あればステロイドの投与を開始する(下図参照)。この際に重要なのは肺へ障害を及ぼすほかの疾患の除外である。
- 副腎皮質ホルモンによる明確な有効性を示す根拠は十分ではなく、使用方法も経験的に行われていることが多い治療法であることに注意がいる。
- ①~③の病理所見を示すものはステロイド反応性が良好であり、一方で④~⑤はステロイド反応性は不良である。
- ステロイド治療で効果が乏しい場合、シクロスポリンやシクロホスファミド、タクロリムス等の免疫抑制薬を副腎皮質ホルモンと併用することで、生存期間が延長されたとの報告がある。ただし、十分なエビデンスではなく、かつ易感染症による感染症マネジメントが必要になるので留意する。
まとめ
間質性肺炎のマネジメントで最も重要なのは、早期発見し、抗がん剤休薬を含めた対応を迅速に行うことである。そのためにも、患者様自身にもセルフチェックを促し、薬剤師もその症状を見逃さないようにモニタリングをする必要がある。