パパ薬剤師の備忘録

あくまで自己学習の備忘録です。参考程度に見て頂ければと思います。内容については保証できませんのでご了承ください。

めにゅ~

大腸がん<基礎編>

 基礎知識

f:id:papayaku:20200517205839p:plain

  • 大腸は、食物の消化および吸収を行う消化器官で、小腸(回腸)側から、盲腸上行結腸横行結腸下行結腸S状結腸、直腸S状部、直腸(上部、下部)、肛門へと続く。
  • 大腸がんは、大きく「結腸がん」と「直腸がん」に分けられる。
  • 部位別の発生頻度は、「直腸がん」と「S状結腸がん」が多く、この二つで全体の半分以上を占める。
  • 組織型はほとんどが「腺がん」である。ただし肛門付近で発生するがん(肛門管がん)は扁平上皮がんが多くなる。
  • 右側のがん(横行結腸がん、上行結腸がん、盲腸がん)は通過障害を起こしにくく、便の性状変化に気付きにくい。
    →がん増大まで症候が出にくい。腹部腫瘤(しこり)、貧血など。
  • 左側のがん(下行結腸がん、S状結腸がん、直腸がん)は通過障害を起こしやすく、便の性状に変化に気づきやすい。
    →比較的初期から症候が出やすい。下血、血便、便柱狭小化、便秘・下痢など。

「疫学」「原因・誘因」「症状・所見」

  • 好発:50~70代、60代がピーク。
  • 罹患率(2014年) 
    男女計135,434人 男:77,504人 女:57,930人。
    結腸89,629人 直腸45,805人。男性では胃、肺に次ぐ3位、女性では乳がんについで2位。
  • 死亡数(2017年) 
    男女計50,681人 男:27,334人 女23,347人。
    結腸35,349人 直腸15,332人。肺がんに次ぐ2位。
  • 発症の危険因子として、大腸腺腫、肥満、炎症性疾患、家族歴(家族性大腸腺腫FAPやLynch症候群を含む)が知られており、飲酒や喫煙もリスク上昇が示唆されている。
  • 大腸関連遺伝子として、がん遺伝子のRAS、がん抑制遺伝子のAPC、P53がある。

診察・診断

  • 早期発見による治癒率が高く、便潜血を中心とした大腸がん検査を受けることが死亡率を低下させることが欧米でのRCTで示されている(Minnesota試験)。
  • 日本では、抗ヒトヘモグロビン抗体による便潜血2日法(免疫法)が主流で、要検査者は全大腸内視鏡検査やS状結腸内視鏡検査と注腸検査の併用が進められる。ただし、日本では検診受診率が25%と欧米に比べ、非常に低いことが今後の問題となっている。

画像診断

<原発診断>

大腸内視鏡検査
大腸内部をモニターで写し観察する。粘膜表面の病変まで発見でき、病理検査のための病変の一部を採取できる。

注腸造影検査
腸の形状やがんの有無を検査できるが、大腸内視鏡のように組織検査はできない。

 <転移診断>

胸部X線
肺転移の確認

胸腹骨盤部CT
遠隔転移や骨盤内の収蔵kへの浸潤等の確認を行うため実施される。その他必要に応じて、MRIや超音波内視鏡検査、PET検査を追加する。

検体検査

腫瘍マーカー
スクリーニングには推奨されないが、術後患者における再発発見や化学療法の治療効果判定の一助にはなる。(CEA、CA19-9

遺伝子検査
 家族性大腸腺腫症はAPC遺伝子の、Lynch症候群はDNAミスマッチ修復(MMR)遺伝子の生殖細胞系変異を原因とする常染色体優性遺伝子疾患と考えられている。
 Lynch症候群は一般の大腸がんに比べて若年発症、多発性、右側結腸に好発し低分化腺癌の頻度が高い、腫瘍内リンパ球浸潤がみられるなどの組織学的特徴がある。Lynch症候群の腫瘍組織では高頻度にマイクロサテライト不安定性(MSI-High)を認めることが多く、MSI検査もしくはMMR蛋白の免疫染色検査が2次スクリーニングとして使用される。また、MSIはStageⅡ結腸がんの予後因子および5-FUによる術後化学療法の効果予測因子として、さらに最近では免疫チェックポイント阻害薬の効果予測因子としても注目される。

 EGFR(上皮成長因子受容体)の下流シグナル経路にRAS(KRAS,NRAS)遺伝子BRAF遺伝子が存在する。KRAS exon2,3,4またがNRAS exon2,3,4のいずれかで遺伝子変異がある場合は抗EGFR抗体薬の有効性が認められない。そのため、事前にRAS遺伝子検査は必須である。また、5~10%と低い確率だが、BRAF遺伝子(V600E)に変異がある場合は予後不良であることが分かっている。RASとBRAF遺伝子の変異は排他的で同時には存在しないことが分かっている。

 UGT1A1は肝臓のグルクロン酸酵素の1つで、CPT-11(イリノテカン)の活性体SN-38の代謝酵素である。UGT1A1*6/*28は遺伝子多型で、両者の複合ヘテロ、どちらかのホモ接合の場合にGrade3以上の好中球減少が高頻度で認められる。

TMN分類・病期分類

f:id:papayaku:20200524160903p:plain

T-壁深達度

T0 がんを認めない

Tis 上皮粘膜内または粘膜固有層(M:mucosa)に浸潤

T1 粘膜下層(SM:submocosa)に浸潤

T2 固有筋層(MP:proper muscle)に浸潤

T3 漿膜下層、または漿膜被覆のない結腸or直腸の周囲組織に浸潤(漿膜内に収まる)

T4a 臓側腹膜の表面を貫通する(漿膜表面に露出)

T4b 他の臓器または組織に直接浸潤もしくは付着する

N-リンパ節転移

N0 リンパ節転移が認められない

N1 1~3個の所属リンパ節転移

N2a 4~6個の所属リンパ節転移

N2b 7個以上の所属リンパ節転移

M-遠隔転移

M0 遠隔転移なし

M1a 1臓器に限局する転移

M2b 2臓器以上、または腹膜転移

 

f:id:papayaku:20200524163131p:plain

参考書:がん診療レジデントマニュアル