パパ薬剤師の備忘録

あくまで自己学習の備忘録です。参考程度に見て頂ければと思います。内容については保証できませんのでご了承ください。

めにゅ~

悪性腫瘍総論⑤

 症候

症候の全体像

①局所症状 ②腫瘍随伴症候群
・がん病巣の増大による周辺組織へ 
 の浸潤・圧迫
・正常物質(栄養素など)の消費
・生理活性物質の産生
・がん細胞への生体反応
病巣部での症状 病巣から離れた部位の症状
・疼痛
・閉塞
・出血
・臓器機能障害 等
・悪質液(体重減少)
・発熱(腫瘍熱)
・高Ca血症
深部静脈血栓症(DVT)
・播種性血管内凝固(DIC) 等

 

  • がんは、物理的な障害となること、栄養素を奪うこと、生理活性物質を産生すること、などにより正常組織の機能を傷害する。
  • がんの症候は、いずれもがん特異的なものではなく、他疾患でも見られるものである。しかし、初期症状を理解しておくことは、可能な限り早期発見につなげるためには重要である。
  • 各種がん検診は、症候が現れるまえに、より早い段階での診断をめざしたものである。

局所症状

  • 原発巣や転移巣でがん細胞が増殖すると、周囲への圧迫や浸潤が起こり、正常組織機能が障害され局所しょうじょうが発現する。
  • 傷害される部位に応じて発現するので、病巣部位を特定しやすい。
  • 出血の結果起こる貧血も、がんを疑う上で重要な症候であり、消化管がんで多い。 
病巣部位 疼痛 出血 閉塞 その他
頭蓋内 頭痛   水頭症 片麻痺、けいれん、嘔吐
  喀血、血痰 無気肺(肺炎) 嗄声、咳嗽、呼吸苦
乳房   出血   播種触知、血性分泌物
食道   吐血 嚥下困難 嗄声反回神経麻痺)
心窩部痛 吐血 悪心嘔吐 腹水、腹部膨満(腹膜播種)体重減少
すい臓 背部痛   黄疸 腹水、腹部膨満(腹膜播種)体重減少
肝臓・胆管 右季肋部痛   黄疸  
大腸 下腹部痛 下血 便秘、腸閉塞 穿孔
腎臓 側腹部痛 血尿    
膀胱・前立腺 下腹部痛 血尿 尿閉  

 腫瘍随伴症候群

  • 原発巣や転移巣から離れた部位に生じる臓器機能障害を腫瘍随伴症候群という。
代表例 病態 原因となる主ながん
悪液質(体重減少、るいそう) がん細胞によるサイトカイン放出により異化が著しく亢進し、筋肉量や脂肪量が減少する。その結果、四肢のやせと腹水、胸水、全身の浮腫をきたす。 すべてのがん
発熱(腫瘍熱) がん細胞によるサイトカイン放出や細胞壊死によるとされる。 すべてのがん
高Ca血症 がん細胞がPTH同様の作用を有するPTHrPを分泌し、骨吸収が促進する(HHM)。骨に転移、浸潤したがんにより、破骨細胞が刺激されて骨吸収が促進する(LOH)。 すべてのがん
深部静脈血栓症(DVT) がん細胞の壊死に伴い、組織因子が放出され凝固外因系が活性化する。血栓の遊離による塞栓症に注意する。 すべてのがん
播種性血管内凝固(DIC) 凝固系の持続的な活性により、凝固および線溶因子が消費され、血管内血栓の形成とともに出血傾向もきたす。 すべてのがん
バソプレシン分泌過剰SIADH) 血漿浸透圧が低いにもかかわらず、バソプレシンが分泌され、低Na血症をきたす。特に脳浮腫が問題となる。 小細胞肺がん
脳腫瘍
膵がん
ランバートイートン症候群 運動神経終末の電位依存性Caチャネルに対する抗体が産生され、筋への刺激伝達が障害される。下肢優位の筋力低下、易疲労性を示す。 小細胞肺がん
重症筋無力症 骨格筋のアセチルコリン受容体に対する抗体が産生され、筋への刺激伝達が障害される。眼瞼下垂、複視、四肢近位筋の筋力低下などをきたす。 胸腺腫
 悪液質
  • 悪液質とは、”異化の亢進”により筋肉や脂肪が消費されて体重減少を示す病態である。
  • 腹水、胸水、浮腫は血漿蛋白の減少(浸透圧減少)やサイトカインの影響による。
  • 皮下脂肪減少による骨の突出は、褥瘡の原因・悪化要因となる。
  • 体重減少が著しいものを”るいそう”と呼ぶ。一般的に標準体重より20%以上すくないもののこと。

 

今回はここまで。コロナの脅威を思い知る日々です。明日は我が身です。