パパ薬剤師の備忘録

あくまで自己学習の備忘録です。参考程度に見て頂ければと思います。内容については保証できませんのでご了承ください。

めにゅ~

保険証・医療証とは

 保険証

  • 保険証は患者が医療保険制度に加入 していることを示すための証明書である。
  • 保険証には、医療保険制度に加入し、保険料を支払っている「本人(被保険者)や世帯主」と不溶を受けている「家族(被扶養者)」がある。
  • 75歳以上が加入する後期高齢者医療制度には「家族(被扶養者)」は存在しない。これは75歳以上の年齢の方が個人で加入する制度であるから。

保険者番号

  • 6桁(国民健康保険)か8桁(社会保険、国民健康保険;退職者医療、後期高齢者医療制度)の「保険者番号」が記載されている。
  • 保険者番号は、「法別番号」「都道府県番号」「保険者別番号」「検証番号」で構成されている。番号を調べれば保険者を特定できる。
  • 法別番号は、被験者の加入している医療保険の種類を表す「2桁」の番号で、社会保険の場合は被保険者の職種によって番号が分かれている。
  • 都道府県番号は、「保険者」が所在している都道府県を表す「2桁」の番号。
  • 保険者番号は、保険者毎に振り分けられている「3桁」の番号。
  • 検証番号は、末尾に表記されている「1桁」の番号で、決められた計算式を用いて、番号の誤りを検証する。計算方法は末尾から2番目の数字から順に×2、×1を順に繰り返しかけていく。その解が2桁の場合はその数字を足す。これらによって出た数字を合計し、その解の1の位を10から引いた解が法別番号となる。
    例12345674の場合
    →7*2+6*1+5*2+4*1+3*2+2*1+1*2=14+6+10+4+6+2+2
    →5(1+4)+6+1(1+0)+4+6+2+2=26
    →10-6=4

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法別番号

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都道府県番号

医療証

  • 医療証は、患者が公費負担医療制度の給付を受ける資格を有していることを示す証明書。
  • 公費負担医療制度の種類や市町村によって、「医療証」「受給者証」「認定証」など呼び方が変わることがある。
  • 保険症と同じで、法別番号、都道府県番号、負担者別番号(保険者番号)、検証番号で構成される。
  • 都道府県や市町村で同様の公費負担制度も番号が異なるので注意が必要。

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公費法別番号 例 (兵庫)

その他の提示物

高齢受給者証

  • 70歳を迎えた社会保険、国民健康保険加入の方に対し、後期高齢者医療制度へ移行する75歳までの期間交付される。
  • 単独では使用できず、社保、国保の保険証と一緒に窓口で提示する。
  • 高齢受給者証を併用することで自己負担は以下となる。
    標準月額報酬28万以上→3割(負担変更なし)
    標準月額報酬28万以下→2割
  • これを一緒に提出しないと、3割となるので注意。

限度額適用・標準負担額減額証明書

  • 市町村民税が非課税となっている低所得の者が 申請・取得し、医療機関窓口で提示することで自己負担額が減額される制度。

労働者災害補償保険(労災保険)

  • 労働者が業務上(通勤含む)の事由で負傷・疾病・傷害・死亡に対し、医療費を給付する制度。
  • 保険者は「政府」でその事務は事業所管轄の都道府県知事が行う。
  • 1)労災指定機関による「療養の給付」 
    2)非指定医療機関による「療養の費用の支給」
    上記2つに分けられるが、1)を利用する場合は「5号用紙;療養補償給付たる療養の給付請求書、業務上の負傷・疾病)」または「16号の3用紙;療養給付たる療養の給付請求書、通勤上の負傷・疾病の場合)を処方箋と一緒に提出し調剤を依頼される。このとき、急で持参できていない場合は「自費」で処理し、後日請求書と引き換えに返金する。提出された療養の給付所は「労災保険番号」と「事業主の署名押印」を必ず確認すること。
    2)の場合、患者が自ら請求することになるが、患者が持参する「7号(2)用紙;業務災害」または「16号の5用紙;通勤災害」の薬剤師証明欄を記入して、領収書とともに交付する。
  • 一度 医療保険で請求し支給された分は窓口で返金はしない。患者が保険者に7割分(保険者負担分)を返金し(これで薬局に3割、保険者に7割払っている状態)、7号(2)用紙で患者自身が労働監督署に請求する。その際、薬剤師証明欄は記載する。その際、病院側も記載しているか確認する。

    https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/rousaihoken06/dl/04.pdf
    (7号(2)

  • 5号用紙などで申請した医療機関から、別の医療機関に帰る場合、変更後の医療機関に対しては、「様式6号」および「16号の4」を提出しなければならない。
  • 労災アフターケア制度とは、治療後も差異が通夜後遺障害に伴う新たな病気異を防ぐために、労災保険指定医療機関でアフターケア(診察や保健指導、検査など)を無料で受診することができる制度。
  • アフターケアでは、5号用紙に変えて、「健康管理手帳」を提示する必要がある。傷病により2~3年の期限があるのでその都度手帳を確認し、有効期限と健康管理手帳番号を確認する。

日本体育・学校健康センターの災害共済給付

  • 学校(幼稚園~高校)での事故等で口腔内の損傷を受けた児童に対して、医療費を補助する制度。
  • 患者が「医療等の状況」を持参するので、医療機関で必須事項を記載し、学校へ提出することで、後日返還される。したがって、医療機関では一時的に通常負担分を一度支払うことになる。
  • う蝕治療、歯石除去、自由診療分は補助されないので注意。

 

医療保険制度

 保険

  • 保険には大きく分けて2種類ある。
  • ①私的保険(国民が企業と任意に契約する保険;生命保険、火災保険、自動車保険など)②公的保険(医療保険、年金保険、介護保険、労働保険)に大別される。
  • 法律により国民全員がいずれかの保険に加入することになっている→国民皆保険

医療保険

  • 病気やけがで病院で治療を受けた際に支払う費用の負担補助をする制度。
  • 上記を受けるために国民は決められた保険料を納付することが義務付けられている。
  • 医療保険を利用して治療を行うことを「保険診療」という。利用しない場合を「自由診療」という。保険診療は適応などの制限があり、そういった場合、自由診療を選択することがある。

医療保険の種類

社会保険

  • 対象は、会社員や公務員など、雇用されて所得を得ている者とその家族。
  • 本人負担は、0~小学校入学前(未就学児)が2割、小学生~69歳が3割、70~74歳(高齢受給者証併用で)が2割である。ただし、70~74歳で所得が現役並みであれば3割となる。

国民健康保険

  • 自営業、農業従事者など、社会保険加入者以外の者または定年退職により、社会保険加入資格を喪失した者とその家族。
  • 「市町村」または「業種ごとの国民健康保険組合」で加入する。
  • 社会保険加入者で。定年~64歳までは、国民健康保険(退職者医療制度)に加入し、65歳から国民健康保険に変更となる。
  • 本人負担は、基本的に社会保険と同じ。

国民健康保険~退職者医療制度

  • 対象は社会保険加入していた者で、定年退職後に年金(厚生年金、共済年金など)により生計を立てている者とその家族。
  • 「市町村」で加入する。
  • 自己負担は3割。

後期高齢者医療制度

  • 上記3つに加入していたものが75歳以上になると加入する。
  • 75歳以上を対象とした保険制度なので、世帯主が加入した場合はその家族は社会保険や国民健康保険に加入しなおすことになる。
  • 「各都道府県に設置された後期高齢者医療広域連合」にて加入する。
  • 自己負担は1割だが、現役並み所得者は3割となる。
  • 65歳以上で「障害認定」を受けている者は、75歳に満たなくても後期高齢者医療制度に認定されている場合がある(特例)。

公費負担医療制度

  • 「児童福祉法」、「生活保護法」「身体障碍者福祉法」やその他公衆衛生関係や 社会福祉関係に係るものに対し、国や 自治体が医療費を補助する制度。
  • 制度該当者以外は利用できない。つまり国・自治体の申請・承認が必要。
  • 上記の医療保険と併用する場合と公費負担単独で受診する場合がある。
  • 負担割合は地方自治体により変わる。

保険医療に必要なこと

医療機関側

  • 所在地の地方厚生局から「保険」医療機関として「指定」を受けていること。
  • 医師・薬剤師は勤務地または住所地を管轄する地方厚生局に、保険医・保険薬剤師として登録されていること。

患者さん側

  • 医療保険制度に加入しており、被保険者か被扶養者の「被験者症(保険証)」を医療機関に提示すること。
  • 公費負担制度を利用する場合はそれが承認された「医療証」を提示すること。

利用制度による違い

①医療保険制度利用(保険診療)

  • 患者側は決められた負担分の医療費を医療機関に支払い、残りを加入している医療保険の保険者 が支払う。
  • 患者は被保険者証(保険)の提示が必要。

②公費負担制度利用(公費負担医療)

  • 全額公費負担となるので、患者は窓口負担がない(生活保護等)
  • 患者は窓口で医療証、受給者証の提示が必要。

③医療保険制度+公費負担制度の併用

  • 患者は決められた負担分の医療費を医療機関に支払うが、患者負担分の一部を公費が補填する。
    例)自立支援;1割負担(医療保険3割負担の方)
    →1割 患者負担、2割 公費負担、7割 保険者負担
  • 患者は保険証、医療証、受給者証等を提示が必要

 

 

腫瘍崩壊症候群(TLS)

 概容

  • Tumor Lysis Syndrome (TLS) は代謝異常である。
  • 現在では早急な治療介入を要するオンコロジックエマージェンシー (oncologic emergency) のひとつとされている。

機序

  • TLSは抗がん薬に感受性の高い腫瘍である造血器腫瘍や肺がんなどで発生しやすいとされている。
  • TLSは、多様な原因でがん細胞が急速に死滅・崩壊した際に、細胞内のカリウム、リンおよび核酸等が大量に循環血液中に流入し、高負荷となることで発生する。
  • 上記結果として、高尿酸血症、高カリウム血症、高リン血症、低カルシウム血症、高サイトカイン血症および代謝性アシドーシスなどに至り、最終的に急性腎不全や心室性不整脈に至る。
  • Laboratory TLS (LTLS)とClinical TLS (CTLS) の二つに分類される高尾tが多い。前者が検査値などで臨床症状は伴わないが代謝異常が検出される状態を指す。後者はLTLSに臨床症状が伴ったものを指す。

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TLS診断基準

症状

1)抗尿酸血症

  • 血清尿酸値が7mg/dLを超えると診断される。
  • 腫瘍細胞から放出された核酸がプリン体に代謝され、ヒポキサンチン、キサンチンを経て最終的に尿酸となる。
  • 腫瘍細胞の急速な死滅・崩壊により、過剰に尿酸が合成が行われ、排泄が間に合わなくなることで発現する。
  • 高尿酸血症で尿pHが産生に傾いていると、尿酸が尿酸塩となりやすく、集合管で析出しやすくなり、その結果、尿細管閉塞が生じ、最終的に急性腎不全となる。

2)高カリウム血症

  • 急速な腫瘍細胞の死滅・崩壊により、細胞内のカリウムが血中に放出されることで生じる。
  • 腎不全自体が、高カリウム血症を助長するので、他の検査値の上昇も注意が必要となる。
  • K≧5.5mEq/Lで、脱力、知覚異常、筋痙攣等の症状が現れるが、心毒性(致命的な心室細動や心室粗動)が現れるまでは無症状のことも多いので、検査値異常にはtっ唯が必要である。

3)高リン血症、低カルシウム血症

  • 腫瘍細胞の急速な死滅・崩壊で大量のリンが血中に放出されることで起きる。
  • 血中リンが尿中排泄を超える(血清PO4濃度が1.46mmol/L以上)と高リン血症と診断される。
  • 血液中に増加したリンやリン酸イオンはカルシウムと結合し、リン酸カルシウムとなる。それが尿細管で析出すると急性腎不全の原因となる。
  • リン酸カルシウムが析出するということは、二次的に低カルシウム血症を生じていることになる。
  • がん患者は低アルブミン血症(4g/L未満)を呈していることも多く、イオン化カルシウムはアルブミン濃度によって大きく影響を受けるので、適宜補正が必要となる。
    ★補正カルシウム濃度(mg/dL)=実測カルシウム値(mg/dL)
                        +【4-血中アルブミン値(g/dL)】
  • 高リン血症では、悪心、嘔吐、下痢、嗜眠、痙攣が臨床症状としてみられ、低カルシウム血症ではテタニー、不整脈、低血圧、痙攣が認められる。
    テタニー:口唇、舌・手足のしびれ、トルソー徴候と呼ばれる手に現れる
         特異的な屈曲、筋肉の痙攣・硬直を呈する。

4)高サイトカイン血症

  • 腫瘍細胞の崩壊・死滅により大量のサイトカインが放出されて起こる。全身性炎症反応症候群 (systemic inflammatory response syndrome:SIRS) の状態となり、多臓器不全に至ることもある。

対応

1)リスク評価(低リスク、中間リスク、高リスク)

  • 疾患、年齢、腫瘍量によりリスク分類を行う。腎機能、腎浸潤の有無によりTLSのリスク調整を行い、最終的なリスクを決定する。
  • 血清クレアチニン値が基準値を超えている場合は1段階リスクを上げて調整を行う。また、治療前にバイタルサイン、体重、尿量、心電図、採血(尿酸値、リン酸、カリウム、カルシウム、クレアチニン、LDH)の結果から患者の状態を把握することも重要となる。

2)TLS予防

  • 低リスク群(TLS発生率1%未満)では、治療開始から抗がん剤終了後24時間まで1日1回のモニタリング(採血検査、in/outバランス)、通常量の補液を行う。
  • 中間リスク(TLS発生率1~5%)では、治療開始から抗がん剤終了後24時間まで8~12時間おきのモニタリング(採血検査、in/outバランス)、2.5~3L/m2/日の大量補液投与、アロプリノール(300㎎/m2/日 分3)もしくはフェブキソスタット(10~60mg/日 分1)の内服投与を行う。ただし、持続的に上昇する場合やTLS診断時にすでに高尿酸血症がみられる場合はラスブリカーゼ(0.2mg/kg/日 1日1回最大7日間)の投与を検討する。
  • ラスブリカーゼは異種蛋白であり、期間をあけて再投与すると中和抗体が発生するので、初回投与時だけでなく、再投与時も過敏反応について注意が必要である。そのため、ラスブリカーゼ投与歴は必ず確認する。
  • ラスブリカーゼ投与後の検体を室温に放置すると、ラスブリカーゼによる酵素反応が進行し、実際の尿酸値より低くなる可能性があるので、検体採取後は氷上で管理し、4時間以内に測定することが望ましい。
  • 高リスク群(TLS発生率5%以上)は治療開始から抗がん薬投与24時間まで、4-6時間ごとの頻回モニタリング(採血検査、in/outバランス)、2.5~3L/m2/日の大量補液投与、ラスブリカーゼの投与を行う。

3)TLS治療

  • 治療においては、TLS高リスクに準じた対応を行う。また、高カリウム血症や高リン血症等の電解質異常に対しては以下の表のように対応する。

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尿酸降下薬作用機序

 

間質性肺炎

 概容

  • 間質性肺炎は、どの抗がん剤でも起こりうる可能性がある。
  • 発見・対応が遅れるほど予後は悪化する。
    →初期症状を見逃さず、適切な対応を速やかに開始する。
  • 以下の5つに大きく分類される。
    ①慢性間質性肺炎 ひと(CIP)・非特異性間質性肺炎(NSIP)
    ②好酸球性肺炎
    ③閉塞性細気管支炎器質化肺炎
    ④びまん性肺胞障害 ※びまん性・・・一面に広がる
    ⑤過敏性肺炎
  • 上記分類によりステロイドへの反応性が異なったり、予後が違うことに注意が必要である。

機序

  • 抗がん剤による間質性肺炎は、①直接的な障害 ②投与後のアレルギーや炎症による間接的蔡瑁傷害 に分類される。
  • 上記5つのように多様な分類が存在し、機序が完全に明らかになっているわけではない。

直接的障害

  • 「投与量」に依存して起こることが多い。例えば、ブレオマイシンにおける肺線維症は、「総投与量」150mg以下で6.5%、151-300mmgで10.2%、300mg以上で18.8%になるなど直線的に増加している。ただし、明確な関係性の結論は出ていない。日本では300mgを超えないように規定されている。
  • ブレオマイシンの障害機序は、フリーラジカルやTNF-α(tumor necrosis factor α)、インターフェロン 6等の炎症性サイトカインによるものとされている。

間接的障害

  • 投与量には依存せずに発症する。

 

症状

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CTCAE v5.0
  • 疾患固有の症状はない。一般的に乾性咳嗽、呼吸困難といった呼吸器症状に加えて、皮疹や発熱を認めることがある。
  • WBCや好酸球数の上昇がみられる。
  • 生化学検査では、KL-6(シアル化糖鎖抗原KL-6)、SP-D(サーファクタントプロテインD)、SP-A、LDH等が比較的特異的に上昇するマーカーである。
  • 特にKL-6やSP-Dは間質性肺炎の診断および治療効果判定に臨床で広く利用されている。

原因薬剤・危険因子・予後因子

  • 1つの薬剤から多彩なパターンの間質性肺炎が発生することが分かっており、薬剤固有ではない。
  • 患者からの聞き取りの際に、どのパターンかを考えるより、間質性肺炎が疑われる症状の聞き取りを行うことが重要。
  • 細胞傷害性薬剤ではブレオマイシン、メトトレキサート、シクロホスファミド、ブスルファン、ビンブラスチン、エトポシドなどが報告が多く、分子標的薬ではゲフィチニブが有名である。
  • 海外に比べ、ブレオマイシン(10.2%vs0.01%)やゲフィチニブ(5.27%vs0.45%)等の薬剤性肺障害の発症率が高いことが報告されている。

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危険因子・予後因子

対応

  • 最も適切な対応は原因薬剤の中止である。中止後も増悪あればステロイドの投与を開始する(下図参照)。この際に重要なのは肺へ障害を及ぼすほかの疾患の除外である。

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  • 副腎皮質ホルモンによる明確な有効性を示す根拠は十分ではなく、使用方法も経験的に行われていることが多い治療法であることに注意がいる。
  • ①~③の病理所見を示すものはステロイド反応性が良好であり、一方で④~⑤はステロイド反応性は不良である。

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  • ステロイド治療で効果が乏しい場合、シクロスポリンやシクロホスファミド、タクロリムス等の免疫抑制薬を副腎皮質ホルモンと併用することで、生存期間が延長されたとの報告がある。ただし、十分なエビデンスではなく、かつ易感染症による感染症マネジメントが必要になるので留意する。

まとめ

間質性肺炎のマネジメントで最も重要なのは、早期発見し、抗がん剤休薬を含めた対応を迅速に行うことである。そのためにも、患者様自身にもセルフチェックを促し、薬剤師もその症状を見逃さないようにモニタリングをする必要がある。

 

 

後発変更調剤について

後発医薬品への変更調剤で理解が乏しいところをまとめます。

 

一般名処方、先発品、後発品あたりの変更調剤は毎日触れることもあるのでおおよそ理解できていると思います。

 

・先発品→後発品

・後発品→後発品

・一般名処方→後発品・先発品

 

上記が簡単な枠組みで、一般名処方から先発品の場合は対応する同一規格・剤形でないと変更できない点は注意です。基本的に別規格や類似剤形に変更する場合は金額が上がらないことが条件となります。これに関しては日医工さんがまとめているものが参考になります。

Stu-GE

 

ここからが本題で、上記の「先発品」「後発品」以外に「準先発品」「空欄(区分なし)」という分類が存在します。

〇準先発品

・ラシックス

・テグレトール

・フルイトラン

代表的なものは上記があります。この銘柄名処方は変更調剤が可能です。準先発品には対応する後発品が存在するからです。

なぜこの区分になったかというと、昔は先発・後発という概念がなかったからです。平成14年に昭和42年以後に承認された医薬品は「先発品」「後発品」と分類するようになりました。一方で、昭和42年以前の医薬品の薬価収載リストにおける分類は「空欄(分類なし)」ということになりました。

 しかし、昭和42年以降に後発品が承認され、かつ価格差があった場合、元の昭和42年以前の医薬品は状況的に先発品に該当するという考え方から「準先発品」という分類になりました。

 

〇空欄(区分なし)

下記の3つに分類される(漢方は除く)

・昭和42年以前に承認された医薬品

メジコン(15)、ユベラ(50)、コルヒチン(5)「タカタ」が代表的だが、自身は古い薬のため先発・後発の区分がない。しかし、メジコンおよびユベラには同一金額の後発品が存在し変更調剤は可能である。同一金額であるため「区分なし」であり、0.1円でも安ければ「準先発品」とういうことになる。

 

・局方品(日本局方品に収載された成分規格に合わせて作られた医薬品)

プレドニン錠5mg、コデインリン酸塩散1%「タケダ」、ワーファリン1mg、酸化マグネシウム原末「マルイシ」が代表的。この銘柄処方は変更調剤ができない。理由は、基準となる局方医薬品の特許切れ後に申請・承認された医薬品も、後発品ではなく「局方品」となるためである。ただし、オルメサルタン等のように、割と新しい医薬品でも現在局方収載されているものが多くあるが、昔の局方品とは成り立ちが異なり、ここでいう局方品には該当しない。

 覚えておきたいのは、一般名処方で記載された場合は変更調剤が可能である点です。

 

・基礎的医薬品

ミノマイシン顆粒2%、ミノサイクリン塩酸塩顆粒2%「サワイ」

ホスミシン500mg、ホスホマイシン錠500mg「日医工」

パセトシン細粒10%、ワイドシリン細粒10%

上記が代表的なものである。この区分は平静28年から新たに新設されたものである。臨床現場で一定の需要があるにも関わらず、「不採算医薬品」であるため、今後の安定供給が危ぶまれる医薬品に対して、薬価引き上げなどの優遇措置を施したものである。その関係でそれ以前に先発・後発と分類されていた区分は外れ、「空欄(区分なし)」となりました。

 そして、基礎的医薬品における後発変更調剤は疑義解釈にもあるように、以前に先発-後発の関係にあったものはそのまま変更可能となっている。

 

手足症候群

 

 

★手足症候群 Hand-Foot Syndrome;HFS

HFSとは

 抗がん剤治療による治療中に手や足の皮膚にみられる一連症状につけられた名称。これらは左右両側に現れる。
 発現機序の詳細はいろいろ説があるが、フッ化ピリミジン系の場合は皮膚基底細胞の増殖抑制やエクリン汗腺からの薬剤分泌、5-FUの分解産物の関与が示唆されている。
 一方でマルチキナーゼ阻害薬の場合は、PDGFR、c-KIT阻害による表皮やエクリン汗腺の障害等が示唆されている。
 フッ化ピリミジン系でのHFSは高用量で発現頻度が高く、重症化しやすい傾向にある。また、に日本人は欧米人に比べ、高頻度で発現することが分かっている。

<代表薬剤>

注射:ドキソルビシンリポソーム注射剤、
   ドセタキセ
ル、5-FU

経口:カペシタビン、TS-1(テガフール・ギメラシル
  ・オテラシルK)、UFT(テガフール・ウラシル)、
   5-FU、レゴラフェニブ、ソラフェニブ、
  スニチニブ、レンバチニブ、ゲフィチニブ、
  エルロチニ
ブ、アファチニブ、オシメルチニブ

初期症状

 手や足にしびれ、ピリピリ感等の感覚異常や火傷した時のような痛みが起こる。見た目に変化がなくても起こることもあるので注意が必要。また、手足が全体的に赤く腫れぼったくなり、部分的に腫れたり水膨れができる。特に踵や指先などの力がかかる部位にできやすい。

対策

担当医はグレードにより治療方針を決定するのでコントロールが重要となる。HFSは適切な対応でよくなることが分かっているのできちんと対策を講じることが重要となる。また、一時的な休薬はがん治療に影響を与えないことも分かっているので休薬もうまく利用する。

 

★保湿剤

 手洗いや入浴後等乾燥しやすい場面は速やかに保湿剤を使用することを指導する。また、就寝時は保湿時塗布後に木綿手袋や靴下を使用すると保湿効果が上がる事を指導する。

 保湿剤は持続時間や機材の低刺激性の観点から乳剤性軟膏(W/O)が推奨される。以下に示す。

 

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参考までに、

  • W/O型乳剤(軟膏)
    油脂中に水滴が懸濁したもの。O/W型に比べ、保湿時間が持続し、刺激性が低いが、べたつきが強い。
  • O/W型乳剤(クリーム系)
    乳化剤により水中に油脂の微粒子を懸濁させたもの。W/O型乳剤に比べて、べたつきが少なく塗り心地も良いとされるが、保湿時間と基材の刺激性が劣っており、そこを考慮し選択する。

 

参考資料:ネクサバール 手足症候群ポケットガイド等

 

肝細胞がん<治療編>

さて、幹細胞がん薬物療法編です。

 治療

  • 肝細胞がんは、B・C型肝炎ウイルスの持続感染が原因となっているため、定期的なスクリーニングが早期診断に繋がり予後んに影響する。
  • 治療は、「肝予備能」「肝外転移」「脈管侵襲」「腫瘍数」「腫瘍径」の5因子をもとに設定されている、
  • 肝予備能はChild-Pugh分類にて行い、肝切除を考慮する場合はICG検査を含んだ肝障害度を用いる。また、肝外転移、脈管侵襲、腫瘍数、腫瘍径は治療前の画像診断に基づいて判断される。
  • 薬物療法は基本的に分子標的薬に限られる(Child-PughAの場合のみ)。そのほかに肝動脈側瀬化学塞栓療法(TACE)や肝動注化学療法がある。

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治療アルゴリズム

根治目指した治療

肝切除

  • Chilid-Pugh分類等で肝機能良好で遠隔転移や脈管侵襲を伴ってない肝細胞がんでは、手術が選択される。
  • 上記図のように腫瘍数3個以下の場合に選択され、肝切除量は最低限にしながら根治を高める工夫として、術中超音波検査を使用した系統的肝亜区域切除が標準術式とされている。

ラジオ波焼灼療法(RFA)

  • 超音波ガイド下で、腫瘍部分に電極を挿入し、450kHz前後の高周波で電極周囲に熱を発生させ、腫瘍組織を壊死させる方法。肝切除同様、腫瘍数3個いかのばあい適応となる。
  • 3cm3個以下の肝細胞がん肝切除とRFAのRCTの結果が待たれている。

肝動脈化学塞栓療法(TACE;transcatheter arterial chemoembolization)

  • 栄養動脈の遮断で血液の流れを止める効果と抗がん剤が長期的に滞留する効果を意図した治療法。
  • 肝機能が良好で(Child-Pugh A,B)、肝外転移、脈管侵襲がなく腫瘍数が4個以上の場合に選択される。
  • 薬剤を含み徐放する薬剤溶出性ビーズ(drug-eluting beads:DEB)を用いたDEB-TACEも使用される。
  • 合併症として、腫瘍壊死・虚血による塞栓後症候群として、発熱や疼痛、炎症反応がみられる。対症療法で対応していく。

長期生存を期待した治療

 肝動脈注化学療法 

  • 腫瘍門脈侵襲症例や肝内多発症例など肝内で進展している症例に実施される。
  • ソラフェニブ(ネクサバール)と比較して(後ろ向きコホート研究)、5-FUとシスプラチン併用の肝動注化学療法は有意差がなかったことから、ソラフェニブが使用できないChild-Pugh Bに対する治療法としての可能性が報告されている。
  • ①粉末化製剤のシスプラチン ②IFN併用 5-FU動注療法 
    ③低用量CDDP 併用5-FU動注療法

分子標的治療薬

<レンバチニブ;レンビマ>

  • 血管内皮増殖因子受容体1~3(VEGFR1~3)、線維芽細胞増殖因子受容体1~4(FGFR1~4)血小板由来因子受容体α(PDGFRα)幹細胞因子受容体(KIT)などの受容体チロシンキナーゼを阻害するマルチキナーゼ阻害薬である。
  • REFLECT試験により、ソラフェニブと非劣勢が証明された。2018年に肝細胞がんに対する適応が追加された。
  • PSおよび肝予備能が良好で、かつChilid-Pugh分類がAの切除不能進行肝細胞がんに対する一次治療として、ソラフェニブと共に強く推奨される。

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<ソラフェニブ;ネクサバール>

  • RAF阻害薬として開発された。RAF以外にも、血管新生に関わる血管内皮増殖因子受容体2(VEGFR2)血小板由来増殖因子受容体β(PDGFRβ)、腫瘍形成に関わるFlt3(fms-like tyrosine kinase-3)c-kitなどの受容体チロシンキナーゼを阻害するマルチキナーゼ阻害薬である。。
  • SHARP試験:切除不能肝細胞がん Child-Pugh分類A
    全生存期間(OS) プラセボ VS ソラフェニブ 7.9カ月 VS 10.7カ月

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<レゴラフェニブ;スチバーガ>

  • 血管新生に関わる血管内皮増殖因子受容体1~3(VEGFR1~3)、間質組織に発現する線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)血小板由来増殖因子β(PDGFR-β)、腫瘍形成に関わる幹細胞因子受容体(KIT)RET(rearranged during transfection)などの受容体チロシンキナーゼおよびRAS/RAF/MEK/ERK経路活性化に重要なRAF蛋白キナーゼ(BRAF,RAF1)を阻害するマルチキナーゼ阻害薬である。
  • 高脂肪食でレゴラフェニブの活性代謝物(M-2,M-5)の血漿中濃度が低下し、AUC・Cmaxともに低下することが分かっているので、食後でかつ高脂肪食は避けるように指導する。
  • がん化学療法後に増悪した切除不能な肝細胞がんに使用する。RESORCE試験では、ソラフェニブ不応性の進行肝細胞がんにおいて、プラセボと比較して、全生存期間(OS)において、7.8カ月VS10.6カ月と有意に延長している。

 

副作用やその対策については、レジメン編としてまとめます。


薬局で役立つ経口抗がん薬はじめの一歩