手足症候群
★手足症候群 Hand-Foot Syndrome;HFS
HFSとは
抗がん剤治療による治療中に手や足の皮膚にみられる一連症状につけられた名称。これらは左右両側に現れる。
発現機序の詳細はいろいろ説があるが、フッ化ピリミジン系の場合は皮膚基底細胞の増殖抑制やエクリン汗腺からの薬剤分泌、5-FUの分解産物の関与が示唆されている。
一方でマルチキナーゼ阻害薬の場合は、PDGFR、c-KIT阻害による表皮やエクリン汗腺の障害等が示唆されている。
フッ化ピリミジン系でのHFSは高用量で発現頻度が高く、重症化しやすい傾向にある。また、に日本人は欧米人に比べ、高頻度で発現することが分かっている。
<代表薬剤>
注射:ドキソルビシンリポソーム注射剤、
ドセタキセル、5-FU
経口:カペシタビン、TS-1(テガフール・ギメラシル
・オテラシルK)、UFT(テガフール・ウラシル)、
5-FU、レゴラフェニブ、ソラフェニブ、
スニチニブ、レンバチニブ、ゲフィチニブ、
エルロチニブ、アファチニブ、オシメルチニブ
初期症状
手や足にしびれ、ピリピリ感等の感覚異常や火傷した時のような痛みが起こる。見た目に変化がなくても起こることもあるので注意が必要。また、手足が全体的に赤く腫れぼったくなり、部分的に腫れたり水膨れができる。特に踵や指先などの力がかかる部位にできやすい。
対策
担当医はグレードにより治療方針を決定するのでコントロールが重要となる。HFSは適切な対応でよくなることが分かっているのできちんと対策を講じることが重要となる。また、一時的な休薬はがん治療に影響を与えないことも分かっているので休薬もうまく利用する。
★保湿剤
手洗いや入浴後等乾燥しやすい場面は速やかに保湿剤を使用することを指導する。また、就寝時は保湿時塗布後に木綿手袋や靴下を使用すると保湿効果が上がる事を指導する。
保湿剤は持続時間や機材の低刺激性の観点から乳剤性軟膏(W/O)が推奨される。以下に示す。
参考までに、
- W/O型乳剤(軟膏)
油脂中に水滴が懸濁したもの。O/W型に比べ、保湿時間が持続し、刺激性が低いが、べたつきが強い。 - O/W型乳剤(クリーム系)
乳化剤により水中に油脂の微粒子を懸濁させたもの。W/O型乳剤に比べて、べたつきが少なく塗り心地も良いとされるが、保湿時間と基材の刺激性が劣っており、そこを考慮し選択する。
参考資料:ネクサバール 手足症候群ポケットガイド等