パパ薬剤師の備忘録

あくまで自己学習の備忘録です。参考程度に見て頂ければと思います。内容については保証できませんのでご了承ください。

めにゅ~

潰瘍性大腸炎( Ulcerative colitis:UC)

さて、今回は潰瘍性大腸炎についてです。

発症時期年齢ピークも自分の年齢に近く若いので身近な疾患に感じます。

 潰瘍性大腸炎とは

腸に炎症が起こる病気を「炎症性腸疾患」という。この中に、大腸に炎症が起きる「潰瘍性大腸炎」と小腸や大腸などあらゆる消化管に炎症が起こる「クローン病」がある。

 

特徴

  • 国が定めた「指定難病」の1つ
  • 発症原因は不明だが免疫異常が関係していると考えられている。
  • 現在、日本に18万人ほどの患者さんがいる。
  • 発症ピークは男性20-24歳、女性25-29歳といわれている。
  • 重症患者さんは少なく、軽症~中等度が9割を占める。

症状

大腸粘膜に炎症が起き、粘膜がただれると以下のような症状が起きる。

  • 下痢・血便(代表的症状)
  • 発熱
  • 腹痛
  • 体重減少

経過

炎症が起きて症状が強く現れる「活動期」と、症状が治まっている「寛解」がある。治療をきちんと継続していれば、多くの人は寛解を維持できるが、服薬状況が悪くなったりすると再燃して活動期と寛解期を繰り返すこともある。

炎症の広がり

腸のどの場所で炎症が起きているかで3タイプに分かれる。

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  • 腸炎・・・21.7%
  • 左側大腸炎・・・37.4%
  • 全大腸炎・・・37.9%

検査

  • 問診
    ➡下痢の回数、便の性状、血便の頻度・程度、腹痛回数、発熱などがいつから始まったか確認する
  • 便潜血検査
    ➡便に血液が混じっていないかを調べる検査
  • 血液検査
    ➡貧血や炎症の有無、栄養状態を調べる。
    炎症・・・WBCCRP、赤沈などの項目
    ※赤沈:赤血球沈降速度(blood sedimentation)のこと。赤血球が試験管内で沈んでいく速度のこと。ESR(erythrocyte sedimentation rate)ともいう。赤血球は府に帯電しているので、グロブリンフィブリノゲンなどの正に帯電するものが多いと、赤血球は正帯電の者を介して結合・凝集しやすくなり、沈降速度が亢進する。また貧血では赤血球数が少なくなるので沈降は亢進する。逆に、負に帯電する胆汁酸やアルブミンが多いと反発して沈降速度は遅くなる。
    亢進:炎症、感染症心筋梗塞などの細胞破壊、貧血、膠原病、悪性腫瘍等
    遅延:DIC(播種性血管内凝固症候群)、赤血球増加症、低フィブリノゲン症候群
    貧血・出血・・・Hb等の項目
    栄養状態・・・総蛋白、アルブミン等の項目 
  • 大腸内視鏡検査
    診断に欠かせない検査、診断後も定期的に実施が必要とされる。
    肛門から大腸内視鏡を挿入し、炎症の範囲、進行度を調べる。
    検査は15~30分程度で終了するが、場合によっては、粘膜の一部を採取し、顕微鏡にて詳しく調べる場合もある。

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  • 腹部X線検査(レントゲン検査)
    腸内のガスの貯留状態を調べるための検査。

治療

原則的には炎症をコントロールする「薬物療法」が中心。お薬で寛解期は可能。

  • 薬物療法
    完治できる薬はないが、大腸粘膜の炎症は抑えることができる。治療については、活動期と寛解期で2つに分けられる。
    寛解導入療法
    ➡活動期の炎症を抑え、寛解に持ち込む治療
    寛解維持療法
    寛解を長期にわたって維持し、再燃を防ぐ治療

    用いられる薬剤を簡単に説明します。

    ★5-ASA(5-アミノサリチル酸=メサラジン)製剤
    :サラゾスルファピリジン(サラゾピジン
    :メサラジン製剤(ペンタサ・アサコール・リアルダ)

     サラゾスルファピリジンは大腸で、メサラジンとスルファピリジンに変換され、効果を示すのはメサラジンである。ペンタサは時間依存性薬剤で腸で溶解するよう設計されている。小腸から大腸にかけて放出されるアサコールはpH依存性薬剤でアルカリ性で溶出する設計のため、大腸で大量に放出される
     軽症~中等症の治療の中心となる基本的治療薬寛解導入、寛解維持のどちらにも使用される。内服は直腸・S字結腸と後半にあたる部分への効果が届きにくいことがあり、座薬や注腸などの局所製剤をうまく利用することが重要である。内服・坐剤と種類があるので選択しやすい。
     副作用として、allergy反応が出現することがある。服用開始後に発熱を伴う下痢を発症した場合はその可能性があるので主治医に相談が必要である。また、サラゾピジン特有の副作用として、スルファピリジンによる発熱、頭痛、発心・掻痒などの皮膚症状、めまいがある。
    <作用機序>
    ①炎症細胞から放出される活性酸素を除去し、炎症の進展および組織障害を抑制する
    ②ロイコトリエンB4(LTB4)生合成を抑制し、炎症性細胞の組織への浸潤を抑制する

    ステロイド製剤
     :プレドニンプレドニゾロン

     活動期の炎症を強力に抑える薬。寛解導入に使用され、寛解維持に使用することはない。
     必要な期間・必要な量だけ使用される。体重によるがおよそ30~40mg/日で開始することが多く、5~10mgずつ1~2週間の間隔で減量していく。
     ステロイド減量期に増悪や再燃が起こることがあり、ステロイド依存と呼ぶ。この場合、免疫調整剤や血球除去療法を追加や、他薬剤への変更が必要となる。減量中に下痢やけ血便が再燃する場合は早めの相談が必要である。
     副作用として、ステロイドを急に中止した場合に副腎不全が起こることがある。服用中は副腎でのステロイド産生が弱くなっており、中止によりすぐにはステロイド産生が追い付かず、低血糖や全身倦怠感、ショック症状などの症状が出てしまうことがある。

    ★免疫調整薬(チオプリン製剤)
     :メルカプトプリン(ロイケリン散)、
      アザチオプリン(イムラン)

     ステロイド製剤でコントロール不良の場合に使用される。ステロイド抵抗性、ステロイド依存性があるが、チオプリン製剤はステロイド依存性の場合に使用することが多い。ほかの薬剤に比べ薬効がゆっくりと発現するために寛解導入には用いにくい。一方で、寛解維持期ではステロイドの用量を減らすために必要であるとされる。
     最終的に上記薬剤はメルカプトプリンとして作用を示すので本質的には同じ薬と言える。
     日本人は欧米人に比べて少量で効果があるので、少量から(イムラン25~50mg、ロイケリン15~30mg)開始する。
     副作用として、骨髄抑制や肝障害、易感染性、嘔気等がある。また、日本の添付文書上では妊婦へは控えるようになっているが、海外の報告では催奇形性の発生率に服用有無で差異がなかったとの報告されており、現在では妊娠中も安心して服用できるという認識されている。希望する場合は主治医への相談をしてみるとよい。
    <作用機序>
    メルカプトプリン(6-MP)に変換され作用する。細胞内に取り込まれ、チオイノシン酸から6-TGNに変換されDNAに取り込まれて細胞障害作用を発揮すると考えられている。また、チオイノシン酸およびそのメチル化体はプリンヌクレオチド合成に必須な反応を阻害する。

    ★免疫抑制薬
     :シクロスポリン(サンディミュン注射液)、
      タクロリムス(プログラフ)

     上記チオプリン製剤と同様に免疫にかかわる薬剤。違う点は早期に薬効が発現するため、寛解導入などの炎症が強い時期に使用できる点である。ステロイド抵抗性・依存性症例に使用され、血中濃度のモニタリングが必要であるため血液検査を定期的に行う必要がある。いずれもチオプリン製剤による寛解維持療法への移行が一般的である
     副作用として、振戦、高血圧、高血糖電解質異常、腎障害、心毒性などがある。多くの副作用が血中濃度に関連して出現することが多いので血液検査が重要となってくる。
    <作用機序>
     シクロスポリン、タクロリムスはT細胞受容体などからのシグナル伝達を介した免疫亢進作用に重要な酵素であるカルシニューリンを阻害することで、サイトカイン産生抑制およびそれに伴う免疫抑制作用を示す。

    ★抗TNF-α抗体製剤
     :インフリキシマブ注射剤(レミケード)、アダリムマブ皮下注(ヒュミラ)、ゴリムマブ皮下注(シンポニー)

     潰瘍性大腸炎ではTNF-αと呼ばれる炎症を引き起こす物質が体内で増えている。この作用を抑えるのが抗TNF-α抗体製剤である。
     炎症が強くステロイドでコントロールできない場合に使用する。また、免疫機能も抑制するので、投与前に結核などの感染症の確認が必要となる。
     それぞれ寛解導入期と維持期で用量用法が異なるので添付文書を確認すること。また、レミケードは静注、シンポニーは医師・看護師などの医療従事者が皮下注射、ヒュミラは条件を満たせば患者自身の自己皮下注射可能となる
     副作用については結核や敗血症などを含む重症感染症が報告されており、使用にあたっては十分な理解が必要である。
    <作用機序>
    各薬剤少しずつ作用は異なるが、共通して可溶性TNF-αの中和およびTNF-αの受容体結合の阻害によるものと考えられている。そのほか、膜結合型TNF-α発現細胞をCDC(補体依存性細胞傷害)やADCC(抗体依存性細胞媒介型細胞傷害)により障害する。

    ★抗α4β7インテグリン抗体製剤
     :ベドリズマブ注射剤(エンタイピオ)

     リンパ球(メモリーT細胞)上に発現する蛋白質であるα4β7インテグリンという物質の働きで、免疫にかかわるリンパ球が過剰に大腸組織に侵入し炎症を起こしていると考えられている。このα4β7インテグリンの作用を抑える。
     炎症が強くこれまでの薬で効果が得られない場合に用いる。免疫機能も抑えるので、投与前に結核などの感染症の確認が必要である。

    ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤
     :トファシチニブ経口剤(ゼルヤンツ錠5mg)

     潰瘍性大腸炎の患者さんでは炎症を引き起こす原因のサイトカインが過剰に産生されており、JAK阻害剤は細胞内のヤヌスキナーゼ(JAK)と呼ばれる酵素を阻害する。JAKはサイトカイン産生に関わっており、JAKが阻害されることで、サイトカインの産生を抑制し、リンパ球の活性化や増殖などを抑制する。
     注意点はほかの抗体製剤と同じである。
     寛解導入期は1回2錠(10mg)1日2回で8週間(不十分ならもう8週間)行い、維持期が1回1錠(5mg)1日2回で服用する。
     副作用として、結核や敗血症を含む感染症、悪性腫瘍や静脈塞栓症が報告されており、使用には十分な注意が必要である。

 

  • 血球成分除去療法:アダカラム(GMA) 
     重症例やステロイド治療で不十分な場合に使用される。
     国内で開発された治療法で、血液を腕の静脈から体外循環させて、カラムに血液を通過させることで特定の血液成分(主に血球成分)を除去し効果を発揮する。上記療法では顆粒球、単球を除去するアダカラム(GMA)がある。

  • 手術療法
    ①強力な内科的治療を行ったが効果が認められない場合
    ②大腸穿孔など穴が開いてしまった場合
    ③体調の出血がみとめられる場合
    ④大腸がんを併発している場合
    ⑤その他内科的治療では困難と判断される場合
    上記の場合、手術が適応される。
     潰瘍性大腸炎が大腸のみに限られる疾患であることから、大腸を全的する手術が基本となる。方法は、小腸で便をためる袋回腸嚢を作り、これと肛門(管)を縫い合わせることで、肛門を温存する手術が主流となっている。

 

さて、今回はなんとなく潰瘍性大腸炎のパンフレット等を見ていて、わかりやすかったのでまとめました。こつこつ備忘録としてやらないと忘れていきますね。

今日の治療薬と治療薬ハンドブックを使ってますが、毎年交互に購入してます。

 

今日の治療薬2020: 解説と便覧

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