胃がん<基礎編>
基礎知識
- 胃は食道と小腸の間に位置する袋状の臓器である。
- 胃の壁は内側から順に、胃液などを分泌する粘膜(M)、粘膜を支える粘膜筋板(MM)、粘膜と固有筋層をつなぐ粘膜下層(SM)、胃の動きを担当する固有筋層(MP)、胃全体を包む薄い膜である漿膜等に分類される。
- 胃がんは、胃壁のどのくらいの深さまで入り込んでいるか(深達度)で、粘膜または粘膜下層にとどまる早期胃がんと固有筋層より深くに及ぶ進行胃がんに分類される。
- ほかに、リンパ節転移や他臓器への転移の程度により、病期(ステージ)と治療方針が決定される。
疫学
- 2014年の罹患率は、男性で89,094人(1位)、女性で40,145人(3位)で男女計で全体の2位である。
- 2017年の死亡数は、男性29,745人(2位)、女性15,481人(4位)で男女計3位である。年齢調整死亡率は男女ともに減少傾向である。
- 胃がんの罹患率は東アジア(日本含む)で高く、米国白人は低い。日本は東アジアの中でも高率地域である。
- 発症危険因子は、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)菌感染や高塩分食、喫煙、飲酒等が挙げげられる。予防的因子としては野菜・果物の摂取が挙げげられる。
- 胃がんの5年生存率は、初期ステージであるほど高く、早期診断・治療が重要であることがわかる。また、近年は特に進行がんの生存率も治療の進歩で上昇している。
診察・診断
主な症状としては、上腹部痛、食欲不振、嘔気・嘔吐、体重減少、貧血などが挙げられるが、特異的な症状ではなく、胃がんの診断・治療決定までには以下のような検査を行う必要がある。
- 上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)
胃カメラを口や鼻から入れて、胃の中を直接確認する検査。原発巣の検査として行われ、生検による組織学的診断に必須となる。診断法による感度(がんであると正しく診断できる精度)は85~97%である。 - 胃X線検査(バリウム検査)
バリウムを飲み、レントゲンで胃の形や胃壁の進展度などを確認する検査。原発巣の検査として行われ、粘膜面に病病変が露出しにくいスキルス胃がんの診断や、切除範囲の決定に重要な検査である。感度は約70~80%、特異度(癌ではないと診断する精度)は90%である。 - ペプシノゲン検査
血液検査から胃粘膜の萎縮度を調べる。胃がんを直接発見する検査ではないが、一部胃がんは粘膜萎縮から発生することがあるので、この検査きっかけで見つかることもある。感度は55%くらいだが、陽性であれば、検診を受けることが望ましい。 - ヘリコバクター・ピロリ抗体検査
血液検査等でヘリコバクター・ピロリ菌に感染しているまたは感染したことがあるかを調べる。胃がんの発生リスクではあるが、感染すれば必ず胃がんが発生するわけではないので、胃カメラやバリウム検査が必要となる。 - 超音波内視鏡検査
がんの深達度やリンパ節転移の有無などについて詳しく診断することが可能である。通常の内視鏡検査では難しいと判断される場合使用される。 - CT検査
X線を使用し、体の内部を輪切りのように書き出し撮影する検査。ステージ診断に有用である。 - PET/CT検査
放射性ブドウ糖液を注射し、その取り込み分布を撮影し、全身のがん細胞を検出する検査。ほかの検査で転移・再発が確定できない場合に行うことがある。 - 注腸検査
大腸からバリウムを注入し、X線写真を撮る検査。大腸へのがんの広がりがないか、腹膜播種がないか等を調べる。 -
検体検査
CEA、CA19-9は病勢検査に頻用されているが、診断には適さない。手術後の再発チェックや薬物療法の効果判定の「参考」に使用される。
約20%の症例にHER2蛋白陽性を認めるので、抗HER2薬の使用の可否を確認するために、HER2検査が行われる。一次化学療法前にHER2検査を行うことが強く推奨される。
Stage分類
混乱を避けるために、進行度の接頭語にはc(clinical:臨床的), p(pathological:病理学的)を付ける。術前療法がおこなわれた場合の臨床進行度と病理進行度は「yc」,「yp」と付記する。つまり、術前療法後に切除された場合、cTMN,ycTMN,ypTMNを記録することになる。術前療法がなく切除された場合はcTMN,pTMNのみの記録となる。
これは次回作(分作)が楽しみ。毎日少しずつやったけど絵もきれいでサクサク進んで面白かった。