悪性腫瘍総論③
発生と進行 ~遺伝子変異の蓄積~
- がんは、正常細胞が遺伝子変異を起こすことで発生する。
- 遺伝子変異は、正常細胞が持つ性質の喪失や、新たな性質の獲得などの形質転換につながる。
- がんは、遺伝子変異が蓄積し、形質転換を繰り返すことで悪性度を増しながら進行していく。
正常細胞 | がん細胞 | がん細胞の獲得能 |
---|---|---|
・増殖因子による刺激を受けた時だけ細 胞分裂を起こす |
・増殖因子なしでも細胞分裂 を起こす |
増殖刺激の 自己充足 |
一定回数だけしか細胞分裂できない |
・テロメア長を維持する機能を獲得 し、無制限に細胞増殖を繰り返すこ とができる |
無制限の増殖 |
・DNA損傷が起きるとアポトーシスが起 こる |
・DNA損傷があってもアポトーシ スを起こさない |
の回避 |
・体内で一定の位置を維持し移動しない | ・隣接部へ浸潤、離れた場所へ転移する | 浸潤・転移 |
”テロメア”
染色体両端には、「TTAGGG」の6塩基反復配列構造があり、これをテロメアと呼ぶ。染色体安定化のための構造であり、細胞部分列のたびに短くなり、細胞は一定数しか細胞分裂ができないようになっている。がん細胞はこのテロメアを延長する酵素(テロメラーゼ)を発現しているためほぼ無限に増殖できる。
細胞周期
- 細胞周期はG1期、S期、G2期、M期を循環的に繰り返すことで増殖する。
- 正常細胞及びがん細胞で共通するサイクルである。
- 全ての細胞が細胞周期サイクル上にいるわけではなく、G0期と呼ばれる静止期にとどまっている細胞もある。
- 1個の親細胞から2個の娘細胞が形成される。細胞数が2倍になる。
- 細胞分裂の準備を行う期間を”間期”、実際に細胞分裂する期間を”分裂期”という。間期はG1期、S (synthesis)期、G2期が含まれ、分裂期にはM (mitotic)期が含まれる。
- M期のうち、染色体や方錐体微小管などの糸状の構造が観察される期間を有糸分裂期という。それに続くのが細胞質分裂期で細胞膜や細胞質が分離し、完全に2個の娘細胞となる。
- 光学顕微鏡で糸状は確認でき、分裂期にある細胞比率が多い組織ほど、増殖が盛んな組織であると判断される。
- 細胞周期の進行には、適切な増殖機構と異常があった場合の停止制御機構が備わっている。
- 増殖機構には、増殖因子・受容体による反応とそれに続く増殖シグナル伝達がある。最終的に”サイクリン”と呼ばれる調節因子がリン酸化酵素CDKに結合することで細胞周期が進行する。
- 停止制御機構には、DNA損傷・DNA複製異常の有無で異常の程度により、周期停止・DNA複製を行ったり、高度であればアポトーシスを促す働きがある。
- がん細胞には多数の遺伝子変異が蓄積しており、、そのうち、がんの発生・進展に重要な役割を果たしている変異を”ドライバー変異”という。
- 「肥大」とは細胞が大きくなることで臓器や組織が本来の形状を保ったまま増大する現象のこと。一方で「過形成」とは臓器・組織を構成している細胞の過剰な増殖により細胞の数が増え、臓器・組織が増大する現象。ただし、生理的制御を受けた細胞増殖で、原因が取り除かれれば増殖は停止する部分が腫瘍の増殖とは異なる。
さて、今回はこれくらいにしましょう。なかなかブログの仕様になれないので見にくかったらごめんなさい。